授業の振り返りシート

先日、非常勤先のFD研修会にある高名な先生がいらっしゃるとのことで参加させていただいた。

その中に「大福帳」についてのお話があった。

大福帳については以下に詳しい。

https://kogolab.wordpress.com/授業のデザイン/大福帳/すべての授業で大福帳を使おう/

https://kogolab.wordpress.com/授業のデザイン/大福帳/大福帳テンプレート/

前任者である先輩から授業を引き継いだときに、「こういうの使うといいぞ」と教えていただいて、「振り返りシート」という名前で以下のようなものをA4サイズに印刷して使っていたのだが、これも大福帳の一つの形だろう。

振り返りシート-001

ただ、授業を1年やった中で、感想に「おなかすいた」とか「ねむかった」とかそういうのばかり書いてくる学生さんをたくさん見てきたので、「感想を書け」とだけ言われても何を書いたらいいのかわからないというのもあるのかなあとか、どうせ書くなら、ポートフォリオみたいな、そういう後になって学びを振り返れるようなものがいいかなあとか、いろいろ考えた。

それで、今年度の後期からはこういう感じにマイナーチェンジしたものを、A3サイズに印刷して使っていた(実際に使っていたものとは少し異なるが、理由は後述)。

振り返りシート_20160302

振り返りシート_20160302(PDF)

項目は小テストの得点のほか、「できたこと/わかったこと」、「できなかったこと/わからなかったこと」、「感想」となっている。

実は後期に実際に使っていたものは、「できたこと」・「できなかったこと」という項目になっていた。「わかったこと」・「わからなかったこと」という記述は、後期が終了した後に追加した。これは、他の人の発表を聞くような回では、できたことを書けと言われても「人の話をちゃんと聞けた」くらいのことしかなくて、何を書いたらいいのかわからないという苦情があったからだ。

「授業内の質問」というのは、「今おなかすいていますか?」みたいな質問ではなくて、授業内容に関わるような質問のこと。以下のページの「発問即テスト法」を見て「いいな」と思って取り入れてみた。

https://sites.google.com/site/zukeshomepage/publications/practical-papers/030-wakaru

このシートをしっかり書きさえすれば、出席回数、小テストの得点から、自分がどのような内容を学んできたのかまで一目瞭然、とは言いすぎだが、少なくとも授業の中でやってきたことは把握しやすいのではないかと思っている。
少なくとも、成績評価の際に出席回数の確認はすぐできるし、小テストがどの程度の出来なのか一目で把握できたりと(さすがにここに書かれた得点をそのまま評価の際に使うのは躊躇するが)、教員側にとってもなかなか便利ではある。

 


そういえば、研修会の中で、eラーニング教材向けの動画作成ソフトの話があって(むしろこちらが本筋)、いろいろと使えそうで非常に興味深いお話だったのだけど、それについてはまた後日。

順位相関係数の信頼区間の算出

何度もやってるのにどうも覚えられないのでここにまとめてメモ書き。

自分の研究は、質問紙などの順序尺度データだったり、正規性のないデータだったりを使うことが多いので、相関分析をする場合には必然的にピアソンの積率相関係数ではなく、順位相関係数を使うことが多い。

基本的にはスピアマンを使っているが、ケンドールが報告されているのをあまり見かけないのでいつかドヤ顔で使ってみたいという厨二心もある。

順位相関係数を出すだけならすぐにできる。Rだとこう(ダジャレではない)。

> cor(dat, method=”spearman”) #スピアマン

> cor(dat, method=”kendall”) #ケンドール

無相関検定とか信頼区間の算出をする場合はcor.test関数を使う(引数が2つ必要なことに注意)。

> cor.test(dat[,1],dat[,2],method=”spearman”)

Spearman’s rank correlation rho

data: dat[, 1] and dat[, 2]
S = 459.55, p-value = 0.001742
alternative hypothesis: true rho is not equal to 0
sample estimates:
rho
0.6544704

警告メッセージ:
cor.test.default(dat[, 1], dat[, 2], method = “spearman”) で:
タイのため正確な p 値を計算することができ

はいでてきt、あ、あれ?

調べてみるとcor.test関数では、ピアソンの積率相関の場合のみにしか信頼区間を出してくれないらしい。

http://www.inside-r.org/r-doc/stats/cor.test

次はこれを試してみた。corrgramパッケージのcorrgram関数。信頼区間が一気出しできるpanel.confオプションが便利。

https://cran.r-project.org/web/packages/corrgram/corrgram.pdf

だがここにも落とし穴。

結局は中でcor.testが動いているので、順位相関では信頼区間が出せないいうことだそうだ。

はてさて、困った。


【解決策1】

langtestを使う。スピアマンでもケンドールでも使える。一番簡単かつ手っ取り早い。

http://langtest.jp/shiny/cor/

【解決策2】

スピアマンの場合、DescToolsパッケージのSpearmanRho関数を使う。

https://cran.r-project.org/web/packages/DescTools/DescTools.pdf

1,2番目の引数には変数、3番めの引数では

> library(DescTools)
> SpearmanRho(dat[,1],dat[,2],conf.level=0.95)
rho lwr.ci ups.ci
0.6544704 0.2983596 0.8506335

この結果はlangtestの結果と一致する。

【解決策3】

これもスピアマンの場合。RVAideMemoireパッケージのspearman.ci関数を使う。

https://cran.r-project.org/web/packages/RVAideMemoire/RVAideMemoire.pdf

これは上の2つとは違い、スピアマン順位相関のブートストラップ信頼区間を出してくれる。

> library(RVAideMemoire)
*** Package RVAideMemoire v 0.9-52 ***

> spearman.ci(dat[,1], dat[,2], nrep=1000, conf.level=0.95)

Spearman’s rank correlation

data: dat[, 1] and dat[, 2]
1000 replicates

95 percent confidence interval:
0.2263722 0.9238737
sample estimates:
rho
0.6544704

【解決策4】

これはケンドールの場合のみ。NSM3パッケージのkendall.ci関数を使う。

https://cran.r-project.org/web/packages/NSM3/NSM3.pdf

どうもこの本の計算方法に基づいて信頼区間を算出するようだ。

> kendall.ci(dat[,1], dat[,2], alpha=0.05, bootstrap=F) #漸近解析を使う場合

1 – alpha = 0.95 two-sided CI for tau:
0.187, 0.867

> kendall.ci(dat[,1], dat[,2], alpha=0.05, bootstrap=T, B=1000) #ブートストラップを使う場合

1 – alpha = 0.95 two-sided CI for tau:
0.109, 0.838

ブートストラップを使用する場合は、Bの部分で抽出回数を指定する。

 

いろいろ種類があって、どれを使うのがいいかはよくわからないし、もう全部langtestでOKじゃなかろうかと思ったりもするが、手数は多いに越したことはないだろう。

【追記1】2016.03.13

このようなご指摘があったのでここで紹介させていただきます。

 

【追記2】2016.03.27

Nagoya.R #15にて、このブログの内容について発表しました。以下は発表スライドです。

【追記3】2016.03.27

スピアマンの順位相関係数の信頼区間について、以下のページをご紹介いただきました。

スピアマンの順位相関係数の信頼区間 – 裏 RjpWiki

cor.test関数とrank関数の組み合わせで算出した信頼区間と、ブートストラップで算出した信頼区間との間には大きな差はないようだ。